FFTプレイ日記小説
〜 ファイナルファンタジー東風荘 〜
 
 
登場人物紹介
 
 
□■ 8 ■□
 
 星空が輝いている。
 いや、実際輝いているのは星なのだが、そんな表現してもいいじゃないかとぽちょむ君は、自分自身に突っ込んでいた。というか、自分に突っ込んでくれるキャラがいなくて寂しい思いをしているというのは、実は秘密であった。自分突っ込みについては、これも実は周りの人間に黙認されていたが。
「要するに、もうバレバレだってことさ」
 両手を広げて言ってくるマスターに、当のぽちょむ君は首を傾げた。
「……何がさ、マスター?」
「い、いや。何でもない」
 密かに舌打ちするマスターに、ぽちょむ君はますます訝る。
「バレてるって……あ、そうか。僕の、せふぃに対する愛のことか。いやぁもう照れるなぁ」
「……………………」
 ボケなのか、はたまた本音なのか。どちらにしても突っ込んでやりたいところだが、何て言ってやればいいのか残念ながらマスターのボキャブラリーではこの問題を満たせる言葉を思いつくことはできなかった。
「ところでマスター、首はもう大丈夫なの?」
「首?……ああ、あれは忍法・死んだふりを使ったのでござるよ」
 言って、意味もなく右手の人差し指を左手で、右手に似たような形で握るマスター。
 あまつさえ、意味もなく顔を、ぽちょむ君から見て斜め45度に構えてみせる。
「忍びたるもの、忍法を極めてこそ真の忍びであるゆえ」
「忍法って……マスター、その格好はどう見ても侍だよ?」
「……What?」
 マスターは、甲冑を纏い帯刀していた。足にはなぜか草鞋をはいているが。
「忍者ってのは、僕のようなことを言うんだよ。ほら」
 黒装束に、両手に持つ忍刀。ぽちょむ君は、ベオルブ家の人間でありながら日本かぶれだった。
 まあ、それを言うなら侍も日本特有だが。
「忍者は素早くないとね。そんな甲冑してちゃ、重くて動けないでしょ?」
「Damn it!」
 マスターは、訳の分からない言葉を発して、兜を脱いで地面に叩きつけた。そして頭をかきむしり、しまいには発狂し出す。
(それにしても……だったらあの忍法とやら、どうやったんだろう?)
 実は単なる手品だったのじゃないか、という疑問は彼のわずかな良心によって心の奥底に葬られた。
 星空が綺麗だ。ぽちょむ君は素直にそう思った。こんな純粋な思いは久しぶりだろう。
 思えば、彼女と出会ってからまだ何も進展がない。そうだ、あの娘にこの星空を見せてあげよう。
 そう思いながらも、彼は頬を染め、もじもじする。そんな彼はムッツリスケベ――
(もっとも、ホントはオープンスケベだけどな!)
 そんな、もう生涯何度目かの訳の分からない独白を胸中にしまい、彼はその場に寝転んだ。
 と――
「シャキィィィンッ!」
 途端にぽちょむ君のこめかみを、槍の矛先が掠めていった――いや、刺さった。
 ドクッドクッと出欠(←期待通りの第一変換)のひどいぽちょむ君の顔を、竜騎士姿のブッシュが何の表情も変えず、静かに覗き込む。
「……亡くなられましたかねぇ?」
 ぽちょむ君の身体が痙攣を始めたのを確認すると、彼は1つ小さく頷いた。
「すると、彼の死体をどこかに封印し、証拠隠滅してから晴れて私がベオルブの一員に。ついでにセルフィア嬢も頂いて主人公の座に着
「そうはさせるかぁぁっ!」
 ガバッと起き上がったまではいいものの、立ちくらみというよりは出血多量で再びぽちょむ君は地に倒れてしまった。その様子をブッシュは黙って見ていたが、やがて信じられないほどの回復力でぽちょむ君が起き上がる。そして呼吸を整え、
「ぶ――ブッシュ? 一体何の用なんだ?」
 彼が完全に回復すると、ブッシュは口をわずかに開けた。そして時間と力を貯めて貯めて――
「ちっ」
「何なんだこの野郎」
 しかしブッシュは、それ以降は普段と変わらない様子だった。彼は小さく咳を払うと、
「そういえば、先ほどセルフィアの名を呟いておられましたが」
「う、うん」
「彼女は現在、極悪士……もとい算術士になるべく勉強中ですので、しばらく時間を頂きたいと」
「あ……そなんだ」
 聞けば、現在既に陰陽士の条件はクリアしてるとのこと。ぽちょむ君は改めて感心した。
「せふぃ、確か頭いいんだもんね」
「ええ」
「初めて聞いた時、ちょっと意外に思えたけどね」
「ええ、ええ」
 心持ちか、若干同意の声が大きくなるブッシュ。
「あと、極悪士ってのはちょっと笑ったよ。だって、そんなの既になってるじゃん」
「ええ、ええ」
 大きく頷きながら、ブッシュは「ちくり帳」と題されたメモに何やら素早く書き込んでいる。
 それを、これまた素早くしまい込んで彼は何事もなかったように顔を上げた。
「それでは、明日も早いですからそろそろ寝ますか」
「そうだね」
「……ところで、さっきからあそこで何やらわめき声が聞こえますが……」
「気のせいだよ。さあ帰ろう」
 そう言って、2人はその場を離れていった――
 
(結局、気が付いてくれなかったな)
 オーランはその時うなだれて、はじめて肩を落とした。
 数時間前から星天停止を発動していたらしいのだが……
(星空を眺めていたから、気付くものだと思っていたが……)
「ま、所詮その程度ですから」
 いきなり聞こえてきた声に、オーランは驚愕した。
 見ると、髪の毛をかきむしったと思われる侍風の男が、こちらの顔を覗き込んでいる。
「じゃ、また来週」
 訳の分からない言葉を言って、謎のサムライはいんちきなムーンウォークで去っていった……
 
 
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