「ロン! リーチ一発白三色全帯ドラ6の……んーと、何でもいいや。とりあえず飛んどけ!」
指を折るブッシュの鼻に、マスターがすかさず、それぞれ両手に持っていた100点棒を差し込んだ。 「200点しかないんだから、そら飛びますわ旦那」 「しっかしアンタね〜、あそこで1筒を出すかね普通?」 嘆息しながらセルフィアは、点数表に『とりあえず飛び……っていうかビリ確定?』と書き込みながらスルメの足を口に入れた。 「しょうがないだろよ、アレを切れば俺だって四暗刻単騎だったんだ」 「単騎といえばさ、よくブッシュも単騎待ちを選んだよねぇ」 牌をかき混ぜながらぽちょむ君が感心した。 「そりゃ、ねぇ。男だったら勝負で高め狙わなきゃ」 「ひやー、ひょっほ悩んらんらへろはぁ。ひっほアフハーはらひてふれるらろぅなほおもっへ」 顔では笑っていながら、しかし頭を振って点棒を引っこ抜こうともがくブッシュ。その陰では、マスターが不敵な笑みを浮かべて目を光らせている。 「あーあ、また大統領が1位かぁ……」 「またといえば、せふぃもまた3位だったよね。まだ治んないの、3位病?」 「ほっといてよ。ぽちょむ君だって2位ばっかりじゃない」 (つまるところ、俺がさっきからビリなんだよコンチクショウ!) (><)←こんな顔をして涙を流しながら、マスターが胸中で呟いた。 外はまだ雪が降っている。そういえば、アルガスが逝った夜もこんな雪だったなと、マスターは窓越しにその景色を見ながら懐旧に浸った。ふと我に返ると、後ろでまだもがいているブッシュの姿がうっすらと窓に映っている。が、何とか点棒が抜けて―― ブーッ 吹き出た鼻血が、マスターの後頭部から腰にかけて直撃した! 顔面をドス黒くして振り向くマスター。そして、顎まで鼻血を滴らせながら目を光らせるブッシュ。 2人が拳を握り、構えを取る。そして、決着をつけようと自分の選択を相手に表示させようとしたその時―― 「そういえば大統領、さっきマスターを飛ばした手って数え役満だったんだよね」 呼びかけに応え、ブッシュの、血塗られた顔が無音でセルフィアへと振り向く。 静かに滴る血。絶句するセルフィアの双眸が、その血と同じ深紅に染まる。 「…………はぁんっ」 音もなく崩れ落ちるセルフィアの身体を、ぽちょむ君は無意識に受け止めた。 「ど、どうしたんだよせふぃ? ねえ、ねえってば!」 しかし、彼の呼びかけにもセルフィアは反応しない。だが、そこでぽちょむ君は気がついた。 透けるような白い肌。潤った赤い唇。暗い空間に輝くようにこぼれ、流れ落ちるブロンド。 そして、まるでお姫様のように自分の腕の中に身を任せている、彼女。 普段は小生意気に思えるのに、今はひどく愛しく思えるその表情に胸キュン☆胸キュン☆胸キュン☆ (き……キスくらいだったら、いいよね……?) 思い立ったが吉日と、震えながらも唇を重ねようと、目を閉じるぽちょむ君。 だが、太い体力を持つセルフィアは、既に復活していたのだ! (ギャース!!!) しかし、もう止まらない。彼のアプローチ(?)に気付いたセルフィアは反射的に彼の頭を沈めると、自分の身体を抱きしめてとっさに半歩ほど下がった。 「い、いや――っ、お嫁に行けなくなっちゃう!」 「そ――」 その悲痛な言葉に、まるでスイッチを入れられたかのようにマスターが反応した。 「それで嫁に行くつもりだったのか貴様ぁっ!?」 「星天爆撃打!!」 ドガーンッ(ブレイク) 『マスターのづら』を破壊した! 「……………………!!?」 マスターは死んだ。 (……さって、回想シーンも終わったし、早いとこせふぃ達を探しに行かなきゃ) 「どうした、ぽちょむ君。早く行かンと日が暮れるぞ」 「ああ、今行くよガフガリオン」 ぽちょむ君は歩き出した。 かつての仲間を見つけるために、まずはゼイレキレの滝を目指して。 (でも……何か怪しいと思っていたけど、マスターってづらだったんだな) 形見のかつらをポケットにしまい、ぽちょむ君は独白した。 |