帝国侵略記

〜 2006.3.18 - 3.21 〜
 
 
3/18(土) 
エンパイヤ。 
遥か彼方、宮城県に聳えるというスロッターの聖地。 
その存在については、少なくとも3年前には知っていた。 
が、しかし。よほどのことがない限り、宮城県なんて行くつもりはなかった。 
だから、自分にとっては文字通り、幻の聖地となる。 
かつては、そう思って疑わなかった―― 
  


  
【発端】 
事の発端は、昨年末のチャットにて。 
MR氏、ダブル先生、そして自分といういつものメンバーで、いつものように話していた。 
しかし、何かがきっかけでファウストの話になる。 
この当時は、ファウストといえばグリンピース歌舞伎町店地下でしか打ったことがなかった。 
それもそのはず。我々からして見れば、最も近いファウスト設置店がそこであったからだ。 
残りの設置店は全て、奇しくも宮城県。そこは、ファウスターにとってみても聖地であった。 
当時の情報では、帝国・エンパイヤにはファウストが複数台設置していることしか知らなかった。 
だが、それだけでも十分だった。 
  
 「もう1度、ファウストデーができるかも」 
  
ファウストデーとは、ファウスト好きが集まって、共にファウストを楽しむオフの呼称。 
かつては年に1度開催していたが、この度のみなし機撤去に伴い、開催場所に困っていた。 
やむなくファウストデーは実質中止となり、それ以降は普通にオフ会を開催していた。 
しかし――もう1度、あの時間を体験できるかもしれない。 
  
 「せっかくだから、俺は来年行ってみようと思う」 
  
そう言い出したのは、自分だった。 
唐突の発言に、しかし2人は「その時はお供したい」と同意してくれた。 
ならば、季節やお互いのスケジュールを考えて――決戦は3月末の連休に。 
そう決めて、各々は3月末の来る日を楽しみに待つことにした。 
  
それから、約1ヶ月。 
東京ではたはたさんとオフ会を開き、彼はその時はじめてエンパイヤについて知った。 
以前は「わざわざ宮城まで行って打ちたいとは思わない」と言っていた彼だが、態度が一変。 
  
 「何ですか、この涎の出そうなラインナップは?」 
  
そう。エンパイヤの魅力は、ファウストだけではなかった。 
山佐系ではシーマスター、イプシロン、アラベスク。他にもタイムクロス、関候など。 
他にもオリンピア系がビーナスセブン、プレイガールクィーン、ブルーマリーン。 
そして何より、今となっては国内ただ1台である、2号機センチュリー21。 
彼はみるみるエンパイヤの魅力に取り付かれ、今回の参戦を決意した。 
更に、それから2ヶ月。チャットにて、かずい〜さんの参戦も決定。 
その上、結婚間近で実戦から引退していたkaiさんも一時復帰。 
かくして、住む場所も違う総勢6人の参加者は、後は時が満ちるのを静かに待つだけとなった。 
今はまだ見ぬ、遥かなる聖地に想いを馳せて―― 
  


  
【出発】 
――そして、遂に時は来た。 
2006年3月18日。時刻は午前4時半過ぎ。 
珍しく陸路で旅をする自分にとって、今回は格別の早起きとなった。 
就寝したのは0時過ぎ。つまり、睡眠時間は4時間弱。 
思いまぶたをこずりながら、身支度をしてタクシーを呼ぶ。 
そしたら、これがまた思いの外早くにタクシーがやってきた。まだ支度できてないっての。 
この時間帯はてっきり、タクシーはつかまりにくいものだと思っていたが、杞憂だったか。 
  
 「いやぁ、この時間はまだ、外が暗いですねぇ」 
  
推定年齢55歳のタクシーの運ちゃんは、妙なまでにハイテンションだった。 
聞くと、彼も明日から休みだとかで、その分今日は遅くまで走っているとのこと。 
  
 「人間、なかなか眠れなくっても、横になっているだけで随分違うんですわ」 
 「うちの女房がね、金縛りとか、そういう霊感が強いんですよ」 
  
次から次へと話題を振ってくる。そうでもしないと寝てしまいそうなのだろうか。 
ネタができるのは結構だが、あいにくまだ実戦前。出発すらしたばかり。 
頼むから、もうこれ以上ネタを提供しないで欲しい。日記を書く身にもなってくれ。 
そうはいっても、人のよさそうだったタクシーの運ちゃん。運転ご苦労様。 
徳島駅にて別れを告げ、さあ駅の構内へと入り……入れ、ません。あれ? 
  
午前5時前。外は普通に寒い。
  
出入り口は全て封鎖され、これでは中に入れない。 
後で聞くと、いつも朝5時までは閉まっているのだそうだ。知らなかった。 
やがて5時となり、これで寒さは凌げる……と思いきや。今度は電車に乗り込めない。 
  
 「5時半にならないと、乗れないんですよ」 
  
駅員に宣告される。これでは本末転倒だ。早く来た意味がない。 
寝坊しないように早起きして、電車の中で寝ようという自分の魂胆が……ううむ。 
事前調査不足が敗因か。かくなる上は、散歩でもしてこよう。 
暗闇の中を歩き回ることしばらく。いよいよ時刻は5時半となり、電車に乗り込んだ。 
そして、早くに目を閉じる。意外とあっさり眠りにつき、気が付くと高松駅。 
眠気を覚ます意味も兼ねて用を足し、続いてマリンライナーへと乗り継ぐ。 
朝6時という時間でも、乗客数は結構なものだった。運よく座れ、再び眠りにつく。 
短く、しかし深い眠りは、思ったより体力を回復してくれた。もうすぐ岡山か。 
岡山といえば、駅付近には「ビーマックス」という会社がある。 
ちょっと撮ってみようかな、とも思ったが断念した。いいアングルがつかめなかった。 
そのうち、携帯が震える。MR氏からのメールだった。 
見ると、彼もまたこの電車に乗っているという。 
岡山駅に到着し、彼を捜すことしばらく。なかなか見つからない。 
メールを出してみると、新幹線の切符を買っているとのこと。 
まだ買ってなかったのか。事前に買っておくといいよと、前に言ったつもりだったが。 
ともあれ、そうなると切符売り場にいるに違いない。探しやすくはなったか。 
……ああ、いたいた。おおい、って。なかなかこちらに気付かないな。 
  
至近距離で撮影しても、まだ気付かれず。
  
しかし、彼もまたクマがあるな。寝てないのかな。 
かくいう自分も、高松駅で見るとそこそこに付いていたが。 
それはさておき、ようやくこちらに気付いたMR氏。おはようさん。 
さて、それでは新幹線へと乗り込みますか。そして寝貯めしよう。お互いな―― 
岡山駅からは座れる。座れるはず。そう思っていた。そう信じていた! 
  
甘かった。
  
この盛況っぷりを見よ。何だコレ。 
新幹線に乗り込んだ時点で既に、空席なんてありゃしない。 
仕方がないので、MR氏と共に話でもしながら立っていることに。 
しかし眠いね。どうにかして座れんかな。この誤算は結構大きい…… 
などと思っていると、新神戸にて、目の前に座っていた女性が降りていったではないか。 
それはもう、新台を確保するかのように手荷物を投げ込んで空席Get。おめでとう。 
後ろに推定年齢60歳の女性がいたことには、気付かないふりをした。ごめんなさい。 
こんなダメな若者には、輝く未来はないのだろうか。ないやもしれぬ。 
しかし今は、近い将来のために睡眠を取らせて下さい。以上、言い訳でした。おやすみ。 
  


  
気が付くと、もうすぐ新横浜という所まで来ていた。 
座る前にはたはたさんにメールしたら、その時はまだ出発前とのこと。 
神奈川在住はいいな……日帰りできる距離だもんな。 
彼は今、既に東京駅に到着しているらしい。 
MR氏にも伝えておくか、と前を見ると、彼は何やら隣のおじさんと話をしていた。 
聞くと、何やら妙に意気投合したとかで、楽しそうに話しておりました。これもまた旅の醍醐味ですな。 
さて。いよいよ東京駅……はたはたさん曰く、21番ホームとのこと。 
まずは新幹線から降りるか、と思ったら、ズボンの後ろポケット辺りに違和感を感じた。 
はて、と思い視線を落とすと――うは、座っていた座席に財布が落ちてる。 
後ろでMR氏も騒いでだけど、よく気付いたなぁ。危なかった。 
改めて下車。乗り継ぎ時間には余裕があったので、さほど急がずに21番ホームへと進む。 
そこでは、案外簡単にはたはたさんを発見できた。おはようございます。 
さて、問題はかずい〜さんなのだが……彼は携帯メールができないので、連絡が取りにくい。 
新幹線の中にて、一応着信はあったので大丈夫とは思うが……? 
電話をしてみる。すると、彼もまた21番ホームにいらっしゃるとのこと。 
はて、と辺りを見回すと……うは、目の前にいらっしゃいました。お久しぶりです。 
かずい〜さんとは、デスバレー初打ち以来だから……2年ぶりですかね。 
はたはたさんとは初対面。簡単に挨拶を済ませ、再び新幹線に乗り込む。 
いや、しかし。何ですかこの大人数は。東北方面の便だってのに、人多すぎだろ? 
帰省ラッシュでもあるんかな。これもまた予想外の出来事。 
しかし、都合よく4人とも座ることができた。助かったな。 
はたはたさんとMR氏、そしてかずい〜さんと自分という組み合わせで着席。 
ここで、久しぶりにかずい〜さんと直にお話をしたのですが、 
  
 「ところで、今回はどこに行くつもりなのですか?」 
  
唐突にその質問を投げかけられて、ちょっとびっくり。 
思えば確かに、彼には目的地について話していなかったかもしれない。 
我々は驚いて、改めて今回の目的地について語りました。 
  
 「エンパイヤですよ。宮城のエンパイヤ」 
 「ラインナップが凄いですよ? 驚かないで下さいね」 
  
後日談では、彼はどうやらエンパイヤを「聖地」として認識していた模様。 
その後、目的地の那須塩原までは、自分の撮影した写真をかずい〜さんにお見せしていた。 
そこで驚いたのが、この1枚。 
  
昨年9月、新長田にて。
  
これはまず分からないでしょ、と思ってお見せしたのだが―― 
  
 「あ、これはハットトリックですね?」 
  
何でご存じなんですか?(汗) 
レッツとか、その辺りのメジャーっぽいのはご存じなかったのに、コレをご存じとは。 
ちょっと、いやかなり驚きました。訊いてみるものですね。 
他には、MR氏からもらったあるモノについて、もりもりさんに連絡。 
  
その、あるモノとは――コレ。
  
そう。知る人ぞ知る、山佐直営店エンドレスのコイン。 
今月頭に、もりもりさんとお会いした時に「欲しい」とおっしゃっていたので、MR氏にお願いしていたのでした。 
そして、今回氏と同行+来週に都合よくもりもりさんとお会いできる……予定。 
メールにてお知らせすると、お礼を言われました。 
ちなみに、もりもりさんはこの日、ミラクルを打ちに行かれたとか……いいなぁ。 
まあまあ。我々も今から聖地エンパイヤですから。思う存分、楽しみましょう。 
さて、いよいよ那須塩原へ到着。ここには懐かしの、あの人が待ち構えている手筈だが。 
  
【遥かなる旅路】 
午後13時35分。予定通り、那須塩原に到着。 
そして、駅を出た所であの男に連絡だ。断られないといいが?(笑) 
  
 「もしもし、kaiさん? ただ今、那須塩原に着きました」 
 「了解です。自分は今――」 
  
居場所を教えてもらって、こちらからその場所が確認できた。 
と思いきや、彼はわざわざ近くまで車を移動してくれました。感謝。 
  
kaiさん、颯爽と登場。
  
お久しぶりです。髪はやはり、切られたんですねえ。 
先日の事故で参加が危ぶまれたkaiさんですが、今日は妹さんの車を借りてこられたとのこと。 
おかげで助かります。いやはや感謝ですよ。 
えっと、こちらがはたはたさんで、今来られたのがかずい〜さん。で、MR氏は……? 
何やら一悶着あったようですが、最後に駅から現れました。大丈夫? 
ともかく、無事に予定していた5人が集まりましたね。 
そう。ダブル先生は1人、明日からの合流となります。理由は聞いてませんが。 
まあ、大体の予想はつくんだけどね……ともかく、出発しましょうか。 
ここからエンパイヤまで、すんなりといけば16時には到着できる見込みとのこと。 
電車を使えば15時半着は確定だが、それだとkaiさんの参加の意味がない。 
そう。彼は車の修理代の引き替えに、今回は実戦ができないらしい…… 
さぞや無念でありましょう。今日は全員、彼の分まで引きまくる所存です。 
とはいえ、まずはエンパイヤへ。長い旅路を、共に楽しむとしましょうか。 
  


  
遥かなる聖地、エンパイヤ。 
我々の中では「帝国」と称するその地を目指して、一行は那須塩原を後にした。 
いきなり「あっ(ry」なこともあったわけですが……一時はどうなることかと(汗) 
kaiさんがお金を使えないので、残り全員がガソリン代を出して目的地を目指します。 
駅から割と近くにあったガソリンスタンドに寄り、まずはガソリンを補給。 
車から降りてその様子を眺めていると、はたはたさんから全員への差し入れが。 
お茶を頂きました。どうもありがとうございます。 
ちょうどのどが渇いていた自分には、かなり助かりました。 
しかし……へえ。ガソリンスタンドの中にコンビニがあったりするのですか。 
5人を乗せた車は、宮城を目指して軽快に走り出しました。 
自分の調べでは、エンパイヤまでは国道4号線をひたすら北上するのみ。 
付近の地理も調査済みで、とにかく後は走るだけ。気分はまるで、遠足を楽しむ小学生。 
道中、車内ではもちろんスロ談義が展開されることに。 
しかし、長い旅路の中で続いた話題は、やはりスロ以外もありました。 
それは主にゲーム。更に言うと「サガ」。はたはたさんと自分が、熱く語り合いました。 
互いに魔界塔士、秘宝伝説のEDテーマを口ずさむ。それを聴いて、kaiさんは頭を抱えるばかり。 
  
 「うおー。それ、何ですっけ?」 
 『ルールー、ルルルールー♪』 
  
答えたくとも、ただ歌い続ける2人にはしゃべられるはずもなく。 
しかし、答えを知ってからは、kaiさんもある程度は話に参加できてました。 
唯一分からなかったというのは、MR氏。結局、最後まで分からなかったようですが……。 
しかし、後日はたはたさんが言っていたように、それは正直「もったいない」話。 
あんな摩訶不思議な世界観、なかなかお目にはかかれませんからね(笑) 
閑話休題。途中にコンビニに寄ったりなどして、一行は順調に北上していた――かに思えた。 
しかし。目標の16時になっても、現状はようやく福島に到着したところ。 
  
 (まさか――今日はこのまま、打てずに終わるのだろうか?) 
  
一瞬。ほんの一瞬、そんな不安がよぎる。 
だが、それはそれでまた、旅の楽しみとなったかもしれない。 
そうそう顔を合わせることのないメンツ。岡山、愛知、神奈川、栃木、そして徳島から来た5人。 
車の中で和気藹々と、1日談笑しながら旅をするのも、またよし―― 
――と。この時までは、呑気にそう思えた。  
  
【旅路の果てに】 
景色は段々と、「東北っぽさ」を見せ始めていた。 
しかし、実際に東北に来たことのなかった自分には、その表現が一般的に正しいのかは分からない。 
ただ、「スロッター」として簡単に言うならば、香ばしい「店」が目に映り始めたのだ。 
その中でも特筆すべきは、一昨年に閉店したニュースター。 
設置機種は、1号機ファイアバード7Uと、2号機バニーガールの2機種のみ。 
更には、景品交換所が隣の玩具屋といった、異色の老舗店であったという。 
  
 (行ってみたかった――) 
  
kaiさんは、自分と共にそう思ったに違いない。 
ファイアバード7Uは、(記憶が正しければ)自分の初BIG体験機種。 
ただし、もちろんゲーセンにて、だが(笑) ホールでは残念ながら、打ったことがない。 
対して、帝国エンパイヤにある最古機種は、2号機センチュリー21。 
今となっては、設置店は全国にここだけ。そうとあれば――いや、そうでなくとも打たない理由はない。 
他にも楽しみな機種はあるが、まずは「ブッタカ」を聴いてみたい。 
その想いが強いがためか、自分の中に少しずつ、妙に不安を抱き始めていた。 
  
 (このまま、もし着かなかったら――) 
 (何か問題に巻き込まれたら――) 
 (宿が取れなくて、十分な休息もなく翌日を迎えることになったとしたら――) 
  
考え出すときりがない。不安要素は常にある。しかし、その実現可能性は限りなく低い……はず。 
普段は特に意識しない些細な問題すら、大きな不安材料の1つに思えた。 
宮城は未だ遠い。いや、遠いのだろう。現在場所を把握できていないことが、また不安を募らせた。 
車内も次第と、元気を失い始めていた。あるいは、単にネタ切れだったのだろうか。 
時刻はとうに17時半を経過。外は既に暗い。闇は人を、疑心暗鬼に陥らせる。 
その上、ただでさえモチベーションが低下していた一向に、ある障害が待ち構えていた。 
  
 「……何で、こんなに進みが遅いんだ?」 
  
kaiさんが、遂にそう口にした。誰もが思っていた。しかし、原因は分からない。 
苛立ち、疑問。町中ではないにも拘わらず、発生している謎の渋滞。 
本当に、このままエンパイヤに辿り着くことができないかもしれない。そうとさえ思った。 
運転手のkaiさんは、幾度となく首を傾げて前方を見やる。 
他のメンバー達も、疑問に思って止まなかったようだ。ただ、誰も寝てはいなかった。 
そして。渋滞に巻き込まれて、どれほど経っただろうか。突然、「それ」は前方に現れた。 
  
 「あっ!?」 
  
全員が思わず言葉を発した。玉突き事故があったのだ。 
ただでさえ狭い道に、路側帯に入れていたとはいえ3台が停車。これでは渋滞にも納得できる。 
その様子を横目にしながら、我々を乗せた車は渋滞の要因を静かに通り過ぎた。 
  


  
渋滞を過ぎてからの、走行速度は速かった。 
さっきまでの渋滞が、まるで嘘のような快走っぷり。 
  
 「対向車線は、凄い車の列だよなぁ」 
  
誰かが、他人事のようにそう言った気がする。実際、今となっては他人事だった。 
そう。我々にはもう、「大河原」という目標しか見えていなかった。 
宮城県大河原。そこに、夢にまで求めた帝国は存在する。 
kaiさんをはじめ、全員のモチベーションが高まっていくのが感じ取れた。目的地はすぐそこだ。 
一行はとにかく、「大河原」と書かれているであろう看板を見ようと、前方を凝視し―― 
  
 「――あ、あった!」 
  
大河原駅を指し示す看板を確認。ここからは、自分がナビをする。 
  
 「確かね。もうすぐ左手に、さっき見た紳士服屋が見えるから」 
 「コナカ、でしたっけ?」 
 「そうだったかな。で、それが見えた次の角を右に曲がって!」 
 「オッケィ!」 
  
町中を走り続けながら、全員が左に注目する。 
そして、前方左手に「紳士服のコナカ」があるのを、かずい〜さんが発見。 
そこを通り過ぎて、やがて見えた十字角を一気に右に曲がる。 
  
 「確か、帝国って弁当屋の前にあるって――」 
  
MR氏が呟く。車は速度を落とし、一行は車窓から暗い景色の隅々を見渡した。 
すると、ほどなく左手に弁当屋を発見。更には、その右手に―― 
  
  
  
 「あったあぁぁぁぁ!!!!!」 
  
  
  
kaiさんが咆哮を上げた。同時に、他のメンバーも「あった、あれだ」とまくしたてる。 
小さく、しかしはっきりと見える「エンパイヤ」という青いネオンに、我々は歓喜した。 
最後の角を曲がり――そして我々は、遂に帝国を発見した! 
  
  
  
  
  
  
 「うおおおぉぉぉぉっっ!!!!!」 
  
  
  
その景色を見るや否や、全員車内でスタンディングオベーション! 
5つの頭は車の屋根をぶち抜き、車はドカンと大破する。 
煙を振り払いながらも外に出て、ある者は感動の余りむせび泣き、またある者は膝を地に着け天を仰いだ。 
嗚呼、ここが我等の帝国なのか。遂に、遂に我等は辿り着いたのだ! 
  
――とまあ、冗談はそこまでにして。いや、スタンディングオベーションは事実ですが(笑) 
さて、ようやく今日の実戦が始まりますなあ。時刻を見ると、18時30分。 
自分にとっては、起床から計算して14時間という長き旅路でした。いやはや。 
約5時間も運転して下さったkaiさん、お疲れ様でした。他の皆さんも、長旅お疲れ様でした。 
実は車に酔いやすいというはたはたさん。後で聞くと、酔い止めが切れた直後だったとか。 
苦労の後にはいいことありますよ、きっと。さあ、みんな。初日の残り時間を思う存分楽しみましょうぞ! 
  
【17年】 
帝国エンパイヤに入店するが早いか、自分は一直線に目的の台を確保した。 
  
瑞穂製作所の2.2号機、センチュリー21!
  
この時、自分はよほどテンションが高かったのだろう。 
  
 「獲ったあぁぁぁ!」 
  
声高らかに、そう宣言したのを覚えている。目の前に先客がいたにも拘わらず(汗) 
いや。先客とは「エンパイヤの」という意味で……台を奪ったわけではないです。念のため。 
実戦が出来ないkaiさんは、自分の隣に腰掛ける。自分の実戦を見届けるつもりだろうか。 
対して、MR氏、はたはたさん、かずい〜さんの3人は、裏にある山佐系のシマに陣取った。 
  
山佐組。こっそり撮影。
  
氏はいきなりファウストですか。残りの2名はシーマスター。ほほう。 
しばらく様子を見てもいいが、今はセンチュリーと戯れるのが先。 
さっそくコインを投入して実戦開始。うは、この台ってばコイン入れやすい。 
大抵、旧台はコインが(個人的には)入れにくかったりするが、全くそんなことはなし。 
そうとくれば、実戦もサクサクと進められるってもんですよ。 
センチュリーを打ち始めると、しばらくして店員と思しきおばちゃんがやってきました。 
  
 「センチュリー、調子悪くてな。ひょっとしたらBIG中に止まるかもしれんけど」 
 「あ、構いませんよ。打てればそれだけでいいので」 
  
打てればいい。それは心底からの、本音だった。 
スーバニから数えて、自分が打つ2号機はこれで11機種目。 
思えば遠くへ来たものだ……スーバニの初ボーナスはバケだったが、果たしてセンチュリーは? 
  
開始から8分、投資2本。
  
何やらバケが揃ってますねw 狙ったら揃っちゃいました。 
噂のブッタカは、確かに「ブッ、タカタカタカ……」といいました。ちと感動。 
分からない人のために解説すると、つまり「ブッタカ」とはテンパイ音のこと。 
3号機のコンチシリーズとはまた違った、味のある音でした。個人的にはこっちの方が好き。 
引き続き楽しんでいると、おばちゃんが何かを持ってきました。 
  
 「はい、どうぞ」 
  
と言って、渡してくれたのは紙カップのコーヒー。ああ、ありがとうございます。 
熱いコーヒーを口にしながら、センチュリーを楽しむ。何て贅沢なんだろう。 
何たって今、ホールでセンチュリーを打っているのは、世界中で自分1人だけ。 
そう思うと、何だか感慨深いものがありますね。 
  
さて。バケの出玉も飲まれかけたその時、ついに初の2確目が出現。 
目にした時は、思わずのけぞってしまった。 
  
中中段7っ!
  
正直に白状しますと、当初はこれが、かの「プナチェナ」とは気付きませんでした(汗) 
正確には、「思い出せなかった」か? プナチェナ自体は知っていたわけだし…… 
kaiさんとは「プラム付き7からのテンパイは強そう」と話していたが……なぜ分からなかったのか。 
ともかく、プナチェナと意識できなかった罰なのか。これもまた、バケでした(苦笑) 
隣のkaiさんは自分の実戦を見ていて、出目を見ながらあれこれと考察・解説。 
  
 「そういや、さっきから単チェって出ないですよね……」 
 「成立後は出るのかな? 今度入ったら、(出るまで)回してみようか」 
  
センチュリーに対しては、ほぼ全く知識皆無だった2人。 
ただ1つ、先日もりもりさんとお会いした時に教わった「確変」しか知らなかった。 
そう。何とこのセンチュリー、完全確率抽選方式にも拘わらず、「チャンスゾーン」が存在する。 
ゾーンはG数で管理され、そのゾーン毎に「ボーナス抽選確率」そのものが異なるというもの。 
ウソだろぉ、と思うそこのアナタ。実際にエンパイヤまで行ってみて下さい。 
そして、張り出されている攻略誌の内容を見て下さい。確かに、そう書かれてますから。 
話を戻して――バケ2回の出玉は飲まれ、追加投資をすること6本。 
また引けた……けど、またバケ。バケ多いねぇ。そろそろBIG引きたいなあ。 
  
センチュリーブッタカ動画
しかし、揃うのは……ピエロ。
(動画再生には、QuickTimeが必要です)
  
kaiさんはというと、山佐組の様子を見に行ったりしてます。 
といっても、すぐ裏だし。何より店内が静かだから、何が起こったかよく聞こえます。 
ええ、よく分かりましたよ……かずい〜さんの鬼ヒキの様子が(汗) 
全く引けないはたはたさんとは対称的に、シーマスで引きまくるかずい〜神。 
何やら、移動先でことごとく早引きされていたような……羨ましい。 
気が付くと、BIGを引いていないのは、自分とはたはたさんだけになりました。 
kaiさんはというと……携帯アプリでメフィストを堪能(?)されておりました。 
わざわざエンパイヤまで来て、携帯アプリなんて。寂しすぎる(号泣) 
見ていて、さすがに可哀想になったよ。どうにかならんかな。 
  


  
ふと思ったんだけど、先述したセンチュリーの単チェ。 
ハサミ打ちすると出るようだ……けど、特に意味はなし。 
いや、意味はあるか。連チェでなくなるから、払い出しが減る。メリットがないだけ。 
  
ご覧の通り、出るには出る。
  
最初は、コンチのように「単チェ=入り」と思ったんだけどなぁ? 
どうやら、当時にはそんな概念はなかったようだ。ふーむ。 
ところで、このセンチュリー。角台なのだが、左隣には両替機がある。 
更に右隣にはコインサンド(2、3台おきに設置)。何とも優遇された場所ですな。 
で、ポイントは左にある両替機……に貼られている、2枚の写真。 
  
マッパチ。
  
そう。そこには、マッパチが写っている2枚の写真があった。 
このことは、会長の日記で事前に見ていたから知ってたんだけどね。 
会長といえば、マッパチの2人も昭和名旧会の会員なんですよ。知ってた? 
さて。マッパチはさておいて自分の台。現在、再追加投資中……11本目。 
これで合計、19本目ですか。もっとも、はたはたさんはもっと逝っているそうですが(汗) 
いい加減引けないかな……できればBIGを。いや、どうしてもBIGを! 
  
開始から1時間20分……やっと。
  
おお、遂にBIGが引けた。店員のおばちゃんも祝福してくれました。 
プナチェナでないのが心残りではあるが、この時は思い出せてなかったわけで。 
しばらくして、おばちゃんがもう1人奥から現れる。その手には……インスタントカメラ? 
  
 「センチュリーで当たったから、記念に写真撮ったげようか?」 
  
そう。このエンパイヤには、こんなサービスがあるのですよ。 
これが単なる撮影サービスと思うなかれ。この写真は、メッセージ付きで店内に飾られるのだ。 
もちろん、記念にもらうこともできる。その場合は、店内用にもう1枚撮影する。 
  
これは、店内に飾る方。
  
「18年の〜」って書いてるけど、正しくは17年だよな……(汗) 
センチュリー21が発売されたのは、平成元年だから。まあ、細かいことはいいか? 
さて。ようやく、念願の初BIGを体験できたわけですが…… 
JACゲーム中でのこと。kaiさんが、あることに気付きました。 
  
 「ツボさん、JACゲーム中の裏音をよく聴いてみて下さいよ」 
 「え、裏音?」 
  
そう言われて、耳を澄ませる。すると、 
  
 タッタッタタッタッタッタタッタッ、タッタッタタッタッタッタタッタッ 
  
何ともリズミカルな、小気味よい音が聞こえるではないですか。 
特別素晴らしい、という音でもないのに、なぜかリズムに合わせて身体が動く(笑) 
「いいな、コレ」とか言いながら、いい大人2人がウネウネと動いてるんですよ。アヤしいデスネ。 
  
【堪能】 
センチュリーで初BIGを引いてからは、結構サクサクと引けた気がした。 
データを見ると、初BIG以降1時間でボーナス2回なんて書いてあるけど(苦笑) 
いや。結構、台を離れて店内を見て回ったりしたからね。実際、追加投資はしてないし。 
――なぜ、わざわざ店内を見回ったかって?  
なぜなら、この店にあるもの全てが、自分にとって新鮮だったから。 
例えば、各台のデータ表示器1つにしてもそう。 
  
2、カイ。
  
回転数はなし、ボーナス回数のみ。いやしかし……この表示の仕方は、凄い。 
こんなタイプの表示器には、初めて巡り会いました。 
ちなみに、総回転数は分からないけど、過去2日前のボーナス回数は表示できます。 
他にも色々あるけど、やはり特筆すべきは、来客者による色紙の数。 
これ、その様子を撮ってないんだよな……惜しいことをした。 
記念写真もそうだけど、記念「色紙」というのも、この店独自のサービス。  
著名な人はもちろん、誰でも書ける。参加資格はただ1つ、ここに来店することだけ。 
自分はもちろん、MR氏も書いたそうです。明日来たら、飾られてるのかな? 
そうであればぜひ、写真に収めておきたいところだなぁ。 
  


  
他のメンツも各々、好みの台で奮闘していた。 
はたはたさんは、ようやくメフィストで引けたみたい。よかったですね。 
  
赤炎でEXリプ。解除確定♪
  
しかし、この後はEZがことごとくスルー…… 
自分もその辛さは知っているだけに、かなり痛々しい様子でした。 
しかし、彼とは打って変わって調子がいいのがMR氏。 
懐かしいものを見せてくれましたよ。 
  
何とも嬉しい、ハイパー確定!
  
魔法陣。いいなぁ……自分ではしばらく出していない気がする。 
ファウストも打ちたいけど、やはりファウストデーである20日まで、楽しみは取っておきたい。 
それよかセンチュリーですよ。シンプルイズベスト、ブッタカ最高ですね。 
中中段を通してテンパれば確定。いや、むしろ中中段7で確定なのかな? 
隣のkaiさんと、終始あれこれ話しながら打ってましたよ。 
  
 「しかし、アレですね」 
 「……何?」 
 「こんなに台があるのに、センチュリー見ているだけで楽しいですよ」 
  
そうは言っても、内心は打ちたいに決まってるよ。こんな楽園を目の前にしてさ。 
どうにかして、kaiさんも楽しんでもらえる方法はないかしら? 
色々と画策していると、kaiさん自身の方からアイデアが出た。 
  
 「ツボさん。アニかつがコレ打った時は、『テンパれ〜テンパれ〜』と唱えていたそうですよ」 
 「ほう。それでは、我々も唱えてみますか」 
  
で、騙されたと思って「テンパれ〜テンパれ〜」と、2人で言い始めたわけですよ。 
……しかし。端から見ると、何なんですかね。このアヤしさ満点な2人の行動は。 
いい加減、店側から「妙な儀式はおやめ下さい」と、苦情が来そうな気もしますが。 
しかししかし、これが何と効果絶大。あれほど引けなかったBIGが連打。 
一気に箱を使い始めました。ゆっくり打ってるのにも拘わらず、1時間でB3R3。 
kaiさんも、まるで自分が打っているかのように喜んでくれました。 
  
しかし、非プナチェナ。あまり美しくはない……
  
左リールも微妙に上にズレて、見た目はそれほどよろしくない感じ。 
けど、いいんですよ。ホントに打てるだけで。台の保存状態がいいに越したことはないけどね。 
さて、こちらがセンチュリーで夢心地になっている間に、向こうでも何かあったらしい。 
見に行くと、MR氏とかずい〜さんが、ファウストで同時に赤で揃えようとしていました。 
  
ファウストのツインBIG。美しい……!
  
後日、MR氏が「記憶の中の宝石箱」とか言ってたけど、うまいこと言いましたな。 
狙ったわけじゃないけど、暗闇の中に光るファウスト。最高に美しい…… 
ちなみにこの後、2人が同時にベットすると共に赤でした。おめでとう。 
2台同時に奏でるファウストの重低音。また聴けるとは思わなかったよ。 
うーん。これだけでも、ここに来て本当によかったと思う。 
  
さてと。5回目のBIGが終了し、気が付けば閉店10分前。 
クレジットには6枚。ちょっと考えた末に、kaiさんに声を掛けてみた。 
  
 「kaiさん。コレ、打っていいよ」 
 「……マジすか? ホントにいいの?」 
  
目を輝かせるkaiさん。そして、一打一打に想いを込めるかのように打ち始める。 
しかし、10秒も経たずにクレジットの6枚は消えた。だが、それでもkaiさんは満足げだった。 
……って、もういいの? 
  
 「ツボさん。ホントにありがとう」 
 「……ん? いやいや。もっと打っていいよ」 
  
そう言うと、一瞬にしてkaiさんの表情が弾けた。 
後で見ると、ホントは代打ち禁止らしいんだけど。閉店前だし、いいよね? 
おばちゃんもこっち見てたけど、何も言ってこないところを見ると、黙認されたのかな。 
喜び勇んで、再びセンチュリーを打ち始めるkaiさん。 
あと残り数分で、ボーナスを……やっぱ、引けないかな。 
もうちょっと、早くに打たせてあげればよかったよな。やっぱし。 
胸中で1人懺悔をしていると――kaiさんの表情が一変したのが見えた。 
  
右上がり……は、2確っ!!
  
kaiさんの、エンパイヤ最初で最後のBIGを揃える瞬間を撮りました。 
そう。彼がわずか4Gで引いたボーナスはBIG。今日最後の、素晴らしいドラマでした。 
  
 「めちゃめちゃ嬉しい」 
  
そう呟いて、喜ぶkaiさん。もちろん、そのBIGも消化させてあげましたよ。 
結局、kaiさんが引いたBIG分を上乗せして1204枚。15k回収して初日は-4000円。 
  
 「これで、タイムクロスの借りは返してもらったよ」 
 「……ですね」 
  
昨年9月。彼の出玉で引いたタイムクロスのBIG分は、結果的に彼の収支となった。 
もちろん、事前にそのことは聞いていたし、了承もしていた。 
そして今回は、暗黙的にそのお返しとなったわけだ。 
出玉数や換金率は関係ない。互いに打ちたい台を打たせてもらって、その借りを返した。 
それにしても、お互い短い時間でよく引いたよね。これも運命なのかな? 
  


  
初日の実戦を終了し、各々戦果を手にして収支を計算。 
はたはたさんは、結構ヘコんだらしい……けど、内容的には満足とか。 
問題は残りの2人。浮いたって。マジすか? 
そりゃ、まあ。2人とも引くのが早かったしなあ。うーん凄い。 
とはいえ、自分も終盤は結構巻き返せてよかった。軽傷で済んだしね。 
今日は出玉を全部換金したけど、明日はぜひコレをもらおう。 
  
エンパイヤ名物、センチュリーTシャツ。
  
1着250枚での交換。この「魂」の字が、何かいいよね。 
しかし、その上に書かれている文字。ぶっちゃけ、「ちん・こ」と読むのですが…… 
何つーか、店員のおばちゃんがニコニコしながら連呼するんですがww 
そりゃ違う意味の……いや、何でもありませぬ。 
そんな時。カウンター前で全員が集まっている様子を見て、店長さんらしき方から一言ありました。 
  
 「せっかくだから、全員の集合写真でも撮りますか?」 
  
それは名案だ。「お願いします」と応え、インスタントカメラで2枚ほど撮影。 
1枚はお店に、そしてもう1枚は……kaiさんにあげました。 
  
 「あの。携帯ででもお願いできますか?」 
  
その後は、自分の携帯でも撮影して頂きました。 
  
センチュリーTシャツの前にて。
  
後ろに1人おられるのが、かずい〜さん。 
そして、前列の左からMR氏、自分、kaiさん、はたはたさん。 
で……左上にひっそりいるのが、初日欠席のダブル先生w 
いい絵になったね。日記に上げるのが、この時から楽しみでした。 
初日から最高の思い出ができて、全員満足げでエンパイヤを後にすることに。 
いやいや。皆さんお疲れ様でした。 
  
【一時の別れ】 
実戦後は、比較的近くにあったガストで夕食を採ることにした。 
センチュリーの出玉のこともあり、kaiさんにはオゴろうと思っていたのですが、 
  
 「(最後のBIGで)胸がいっぱいで、ドリンクバーしか頼めません」 
  
だって。本人がそう言うなら、仕方ないか。 
残りの4人は、(kaiさんもだが)ロクに食べていないので、それなりの量を注文。 
しかし、あっと言う間に平らげる。腹が減っては戦はできないからねぇ。 
  
 「しかし、初日のたった4時間で、何て充実した内容だったんでしょうね」 
 「ファウストの保存状態も最高でしたよ。グリンピのと比べたら、それはもう――」 
  
話のネタも尽きず、5人で色々と語り合っていたら、あっと言う間に11時過ぎ。 
翌日もあるし、そろそろ出るかと5人は再びkaiさんの(妹さんの)車に乗り込む。 
そして、この後は当然宿舎に向かうのだけど―― 
  
 「おばちゃんの話では、ここから結構近いらしいですよ」 
  
自分達が打っている間、kaiさんは近くの宿舎を探していてくれたのでした。 
聞くと、車で10分程度。4人分の部屋は明日も空いているとか。 
  
 「けど、最終日は空いてないらしいので、それはどうにかしないといけないっすね」 
  
とはいえ、今日、明日の宿が確保できたのはありがたい。 
この車といい、kaiさんには本当にお世話になりました。 
実はこの後、場所が分からなくてしばらく迷ったのですが、無事に到着。 
最後に、全員kaiさんと握手してお別れしました。どうかお元気で…… 
  
 「それでは皆さん、明日からも頑張って下さい」 
  
そう言って、kaiさんは栃木へと帰っていったのでした。 
  


  
泊まった宿は、2人1部屋が数部屋あるという、2階建ての小さな宿。 
MR氏とかずい〜さん、そしてはたはたさんと自分の組に別れ、まずはそれぞれの部屋にGo。 
さて、部屋の様子は……ほう。この畳といい、部屋の雰囲気といい。自分は嫌いじゃないですよ。 
はたはたさんはお疲れのようで、すぐに就寝されました。 
そして自分は……気になる先生に、軽く連絡することに。 
  
 「……あ、もしもし?」 
 「はいはい。そちらはどうでした?」 
 「そりゃもう、最高だったよ。そっちは?」 
 「こっちは……ちょっと辛かったですね。実は……」 
  
彼曰く、今日は地元のイベントを優先して、初日は欠席したらしい。 
ここまでは、大体自分の予想通りだったんだけど、問題はこの後。 
  
 「朝イチに6確定札とかあったんですけど、エース(のBIG中)でハズレまくるんですよ」 
 「南国は南国で、1G連を7回してみたり、その後は単発続きだったり」 
 「……要するに、ガセイベントだったわけね?」 
 「まあ……そういうことですね」 
  
元々、このイベントは月イチの激アツイベントだったらしい。 
で、ここしばらくもオフと重なっていたが、今回こそは、とこちらを選んだのだとか。 
しかし……よりによって、帝国行き初日を断るか、と個人的には思ったが……。 
まあ、それは個人の判断。他人が口出しすることではない、か。 
  
 「そうそう。さっき、集合写真を送ってくれたじゃないですか」 
 「うん。あれ、いいでしょ?」 
 「あれ見たらね。『俺、何でここにいないんだろう』って思いましたよ」 
  
そう言った先生の声が、少しリアルに切なく感じた。 
そして、「明日は楽しみにして来て下さいな」と、電話を切って自分も就寝。 
  
……あ、そうそう。寝る前に、kaiさんからのメールが届きました。 
最高の時間をありがとう、と。今日は、彼にとっての引退式となったそうな(涙) 
できれば、もっと打ってほしかった。不運とはいえ、残念だったよなあ。 
そんな彼の分まで。明日から3日間、大いに楽しむとしよう。 
さあ。明日は、どんなドラマが待ち受けてるんだろう―― 
総投資額:19000円、総獲得額:15000円 
 
 
 
 
機種名 投資額 BIG REG 回収額 収支
センチュリー21 19k 5 6 15.0k -4.0k
 
 
 
執筆所要時間:16時間35分