未来の救世主
朝。僕は珍しく気持ちよく起きることができた。
すがすがしい朝。久しぶりに見る、晴れた青空。こんな朝を迎えるのは何ヶ月ぶりだろ
う……。
久しぶりといえば、僕は今日、夢を見た。
その夢の中で、僕は信じられないことを体験したのだ。
目の前がパッと明るくなったかと思うと、古びた、黒いローブを身にまとった老人が現
れ、僕の頭に手を乗せながらこう言われたのだ。
お前はいつか未来を救う、救世主なのだ、と。
そして、これが伝説の勇者の証である――そう言って老人は僕の手を取り、その上か
ら光をあてた――光が消えるとそこには、翼をかたどるような紋章が現れた。
夢はそこで終わった――そして今日、起きてその手を見ると、確かに夢の中で見た紋
章が、手の甲にはっきりと浮かび上がっている。
僕は、伝説の勇者だ――僕が世界で1番強いんだ。その手をグッと握りしめ、僕は胸
中で自分にそう、言い聞かせた。
今日は日曜日だ。学校はない。1日のんびりと家で過ごしてもいいけど、今は何か体を
動かしたい気分だ。
――そうだ、いいことを思いついた! 僕は急いで服を着替えると、駆け足で外に飛び
出した。
僕のクラスには、とんでもないばか力を持つ、図体のでかいガキ大将のような奴がいる
んだ。僕は力を試すべく、伝説の勇者の第1歩として、そいつに今までの借りを返してや
ろうと、そいつの家に乗り込んだ――
げちょげちょにされた。
− 未来の救世主・完 −
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