他のサイトといっても、当初はやはり「サガ」で検索し、サガ関係のサイトをネットサー
フしていた。
そう。「サガ」である。「ロマサガ」として、ではない。結果、「ロマサガ」はもちろんのこ
と、元祖「サガ」やPSの「サガフロ」も検索に引っかかった。つまり、「ロマサガ」という
枠に収まるだけでなく、もう少し視野を広くしてみよう、そう思ったのである。
検索は「YAHOO! JAPAN」で行った。国内で1番利用者が多いからだ。ある程度検
索を絞り込み、やがて私の目に「NEW!」という文字が入ってきた。別に新しいものが好
きだというわけではないが、私はそこのサイトを覗いてみることにした。
まず、タイトルである画像がゆっくりと展開する。そんなに大きくなく、容量も小さいも
のだったので、ほんの数秒でそれは終わった。そして、そのタイトルの下に、アクセス
カウンターと補足の言葉が現れ――
(…………?)
私はそれを見て、しばらく身動きできなかった。
「ようこそ、僕の○○○○人目の寵姫♪」
こんなことが書かれてあったのだ。無論、第一印象は悪かった――「どこぞの色男が
作るページか」と。ただし、そこで私は、そのページを見るのをやめようとはしなかった。
むしろ、逆なのである。こういうヤツだからこそ、どんなページを作っているのか、そし
て、最低限でもこういうページには負けないようにと、私はそのページを隅々まで見る
ことにした。
が、まず最初に見たのは「プロフィール」の欄であった。どんなヤツが作っているのか、
ここである程度の想像はできる。ページの内容を見るのはそれからだと、私はマウス
をクリックした。
まず、名前。これには、HN(ハンドルネーム)が用いられていた。次に、生年月日。
妹の、1つ下。何だ、ガキか。ますます印象が悪くなる。そして、性別。女。これもまた、
常套なプロフィールの1つだ――
(…………?)
動きが止まった。同時に、胸中で今思ったことを反芻してみる。
プロフィールだ。性別、そして女。
(女……の子が作っている、のか?)
そこで、印象は一変した(笑)。
まあ、男なんてこんなものさ(笑)。さらに、初恋の娘って人が自分のことを「ボク」と言
っていたものだから、相手の顔を、勝手にいいように想像してしまう。かくて、こんなしょ
うもない経緯で、私はそのページを毎日見るようになっていった。
だが、こんな経緯でも――いや、こんな経緯だからこそ、価値があったのかもしれない
――私は、このページに辿り着いて、本当によかったと思う。現に、今でもつき合ってい
るこのHP(ホームページ)「流水のお部屋(現・Junk
Laboratory)」は、当時、大変お
世話になったページの1つであり、何よりインターネットにおける視野をも、広くしてくれ
た。
そして――このページなくして、今の人としての成長はなかったのだ。
私は、他のサイトを見る度に、自分も早くHPを作りたいと思っていた。だが、いつまで
たっても、アカウントとパスワードの取得の連絡が来ない。その間私は、とりあえずHP
掲載用の短編(長編・第1作改稿版)を書くことにした。その他は、決まって流水さん
(「流水のお部屋」のクリエイター)のHPを見ていた。
さて、HPを作るとなると、見てもらう人をある程度作っておかなければならない。そこ
で、まず流水さんにうちのHPをあらかじめ宣伝することにした。
そこで、利用したのが彼女のページの「チャット」であった。当時、私は「掲示板」の
存在を知らなかったので、用がある場合はこの「チャット」を(本来の利用法ではない
が)使っていた。この時はまだ、彼女とは深くつき合うとは思っていなかったので、遊
び半分――というか、インパクトを持たせておきたかった――で、FF7の某キャラの口
調を使うことにした。HNは、迷わずあだ名である「ツボ」を使うことに決めた。偶然、彼
女も小説を書いていたので、まず彼女の小説の感想を、次に自分も小説を書いている
こと、そして今、HPの制作中なので、できたら見てほしいということを書いておいた。
そして翌日。そこには彼女からの返事が書いていた。感想をありがとうとか、HPが
できたらそちらの小説も見せてほしいとか――上々の反応であった。それがHP制作
の拍車をかけ――やがて、アカウント取得の連絡が来た。
実際は、FTPだとかカウンター設置だとか、色々と問題があって予定と多少ずれて
しまったが、今年の2月25日、無事HPを公開することができた。この際、流水さんは
もちろん、プロバイダや地元にいるパソコンの先生といった、多くの方々の協力があ
った。この人達には本当に感謝している。
さて、開設はしたものの、まだ掲示板を設置していないので、また流水さんの――
ようやく掲示板の存在を知って――協力を得た。当時、彼女も掲示板を設置したばか
りで、過去ログにも限りがあった。つまり、私はそこの全ての文章――つまり、そこを
訪れた全ての人を見たことがあるということになる。そして、そこの最初の常連の人
も知っている――
その人の書式から、大体流水さんと同年代で、小説を書く、かなり親しい女の子だ
ということを知ることができた。実際、彼女は流水さんのHPに何作か寄稿もしていた。
チャットでも掲示板でも、私と流水さんを除けば、大体彼女の名が見えた。
(よそのサイトの常連を、自分のサイトに引き込めるようになれば、まあ1人前のサイ
トになったと言っていいのかな。)
彼女の小説を読みながら、私はそう、胸中で独白した。
彼女の名は白夜。後に、私の“小説”としての弟子となる、常連を超える人であった。
次のページへ
小説の目次に戻る
TOPに戻る