叔母・「もしもし、こんのさんのお宅ですか?(標準語風津軽弁でおずおずと・・・)」
(訳)「もしもし、こんのさんのお宅ですか?」
姪・「はい・・・?(あれっ?津軽弁だ!とびっくりしつつ・・・)」
(訳)「はい・・・?」
叔母・「あれ、さとちゃんだが。平賀の工藤です。どすべの、あしたにもらってまって。ぐっとめやぐしてまったでばの。なしてあしたごとすんだー。」
(訳)「あれ、さとちゃんなの。平賀町の工藤です。いやーわるいねーあんなに貰っちゃって。たくさん気遣わせて頂いて。何であんなことするの(別にそんな事しなくていいんだよ)。」
姪・「わー、なんも、なんも。いっつもりんごもらってばっかりでれー。いっつも楽しみにしてるんだよ。そっちのりんご、いぢばんめっきゃ。さくさくって。こっちで売ってるのだきゃめぐねくて・・・」
(訳)「いや別にいいんですよ。いつもリンゴ頂いてばかりで。いつも楽しみにしているんですよ。そっちのリンゴ一番おいしいんですよ。サクサク歯ごたえがあって。こっち(東京)で売っているのはうまくなくて・・・」
叔母・「あれ、さとちゃんの声だの笑いがだだのおめだのおかさんさそっくりだでばの。あれーは。」
(訳)「あれ、さとちゃんの声や笑い方が、あなたのお母さんにそっくりだね。あれま!」
姪・「わー、どすべ。せばあど25年たでばああなるんだっきゃ。どんだー、もう見えでまった(笑)」
(訳)「アララどうましょう。そうすればあと25年経つとあのようになるのか。うわぁーもう先が見えてしまったよ(笑)」
叔母・「みんな元気でらが?」
(訳)「皆元気でいたか?」
姪・「うん、おかげさまで。」
(訳)「うん、おかげ様です。」
叔母・「こっちさ帰ったらうちさも寄りへ。ずんぶあってねの。」
(訳)「こっち(青森)の方に帰ることがあるなら家に寄っておいでよ。随分会ってないものね。」
姪・「んだっきゃ。かえりてんだけどながなが休み取れねくってさ。こどし、ゆぎ多いんだべ?」
(訳)「そうだよね。帰りたいんだけどなかなか休みが取れなくてね。(そう言えば)今年雪が多いんだよね」
叔母・「んだっきゃ。さんびくってどすべの・・・せば、風邪ひがねんでの。」
(訳)「そうなんだよ。寒くてどうしましょう・・・それじゃ、風邪引かないようにね。」
姪・「わざわざどーも。せば、おやすみなさい・・・」
(訳)「わざわざどうも(すみません)。それじゃ、おやすみなさい・・・」
津軽人の感情表現
ここでの会話で気がついた人もいると思われますが、物を頂いたお礼の電話なのに「何であんなことするの?」と言っています。津軽弁を知らないと恩を仇で返すような言葉に聞こえますが、これには「別に気を使わなくていいんだよ」のニュアンスの方が多く込められています。同じような例で、「ありがとうございます」を「わいーめわぐだの」と言います。直訳をすると「うわー迷惑だよ」になりますが、これも「こんなに気を使わせて迷惑かけたね(ありがとう)」になります。感情をストレートに表現する事を恥ずかしがる津軽人の気質が端的に表れている言葉です。津軽弁講座を作り始めて気がついたことですが、津軽弁に限らず方言を理解する事は、その土地の気質を知る事にもつながるのではないでしょうか?