冬は血圧を上げる条件が揃っている
血圧でもうひとつ注目したいのが季節による変動です。冬は血圧が高くなりやすいのです。寒い状態は一種の緊張状態と同じですから、交感神経系の動きが活発になります。また冬には、漬け物などの保存食品を摂る量が増え、結果的に食塩の摂取量が増加します。冬は外出する機会が減るため、運動量が減少し、体重が増加…こうしたことが重なって、冬には血圧が上がるといわれます。ある疫学調査によると、冬季の血圧の上昇度の大きい人ほど、10年後の血圧上昇が大きいとの結果が出ました。つまり、冬に血圧が上がる傾向の強い人は将来、血圧が高くなる可能性が高いというわけです。
また冬季には、高血圧が関係する代表的な病気である心筋梗塞や脳出血、クモ膜下出血などの発症率が高いことも報告されています。暖房のきいた部屋から寒い洗面所などに移動するときに血圧が上昇して、こうした病気の引き金になるケースが多いと思われます。
こうしたことを考えると、高血圧症の人はもちろん、高血圧気味の人も冬には特に血圧に対する注意が必要です。冬場は宴会などが多く、食べ過ぎたり、お酒を飲み過ぎたりしがちです。でも、そこはぐっと我慢して控えめに。また、寒いからとじっとしていてはダメ。心がけて体を動かすようにしましょう。外出時には防寒に留意し、身体を徐々に寒さに慣らすようにするとよいでしょう。そのほか、入浴時には事前に風呂場や脱衣所を暖めておく、トイレも便器などの保温に努めるといったことも実行したいものです。
監修:島本和明(札幌医科大学第2内科教授)