「アトピー・アレルギーお役立ち救急箱」 都会のもつ悪化因子がアトピー性皮膚炎を悪化させる!? 故郷に帰るときれいに治り東京にくると、なぜか発症……
20代女性の患者さんの症例についてお話しましょう。お子さんの将来のことも考えて、読んでみてくださいね。
彼女は小学生のころはヒジ、ヒザにアトピーがありましたが、それほど重症ではなく、中学生のころに治っていました。地方の田園地帯の出身の彼女、高校を卒業して東京に就職したとたん、アトピーが再発症してしまいました。それもかなり悪化しました。
今度は上半身型のアトピーで、顔、首の湿疹で、赤みとかゆみがひどかった。ステロイドは使いたくないということでしたが、漢方や保湿だけでなく、短期間のステロイド治療が必要だと説得をくりかえしました。ところが彼女、会社をやめて故郷にいったん戻ったのですが、「みごと!」というくらいに、きれいになりました。今度は彼女、フリータ−として再び東京で働きはじめましたが、再びアトピーが悪化。故郷に帰るときれいになるというのを何度かくりかえして、結局、故郷で就職をする、という理想的(?)な道を選びました。現在は、もちろんきれいです。

ディーゼル排気粒子は花粉症などの引き金になる!!

彼女の場合、悪化因子は就職によるストレスだけとは考えにくいのです。おそらく、東京という都会の環境が、なんらかの影響を与えていたのではないでしょうか。もちろん、地方にもアトピーはありますが、都市部に住むということが、どうも悪化因子になっているような気がしますね。
たとえば、大都会での住環境。サッシなどの金属枠の使用やコンクリート住宅の普及による気密性の向上、新建材などに含まれるホルマリン等の化学物質。さらには大気汚染、水道水や農薬・添加物だらけの食物(これは地方でも似たようなものですが)など、さまざまな要因が考えられます。
大気汚染については、ディーゼルエンジン車の排気ガス中の「ディーゼル排気粒子(DEP)」がアレルギー悪化の引き金になっているといわれています。
大気に浮遊する物質で、10μm以下のものを浮遊粒子状物質(SMP)といいますが、そのなかで、ディーゼルから排出されるものをDEPとよんでいます。ベンゾピレンやニトロアレーンなどの発ガン性物質を多く含んでいることや、肺や気管にはいると呼吸器に影響をおよぼす、ぜんそくを引き起こすことでも問題視されています。このDEPがアレルゲンと結びつくことで、ぜんそくはいとも簡単に引き起こされますし、アレルギー性鼻炎、花粉症などの引き金にもなっています。ディーゼルエンジン搭載の車は全国津々浦々、走っていますからね、そういう意味では都会のもつ悪化因子が全国にばらまかれているともいえますね。
私のクリニックは環状八号線のすぐ近くです。1970年ころは、光化学スモッグの犠牲に多くの児童がなったという小学校のそばにあります(杉並病も近くです……)。この地域、実はアトピー関係の病院が密集しているんです。ということは、アトピーが悪化しやすい環境にあるんでしょうかねぇ。
ところが、アトピーとは不思議なもので、同じ都会でもロスアンゼルスは違うんですね。30代前半の男性、会社員の患者さんですが、ロスに2〜3カ月、出張していると、きれいになってしまいます。本社とは違うからストレスがあまりないのかとも考えられますが、他にも、海外の大都会ではきれいだったのに、東京暮らしをはじめたら急に発症したという帰国子女の患者さんもいます。

東京脱出は吉!?せめて、旅行なり、転地療法を考えよう

むかし、脚気のことを「江戸病」といってたそうです。江戸にくるとかかり、地方にいくと治るから、とか。実は江戸は白米が一般的だったため、ビタミンB1がどうしても不足しがちで、脚気になる人が多かったというのが真相のようです。アトピーにも特定できる明確な悪化因子があればいいのですが。
東京都の人口密度は約5744人(1km2あたり)です。世界で4番目という日本の人口密度は約330人。いかに東京に人が集中しているか。ちなみに、世界一の人口密度はバングラデシュで約818人。バングラデシュも深刻な問題をかかえていますが、東京のこの密度!!それも半端じゃないですよ。確かに生活がありますから、なかなか東京脱出とはいかないでしょうが、私はできるだけ旅行や転地療法をおすすめしています。
気休めだと、思わないでください。改善した人はたくさんいますし、あなたも、もしそれで改善のきざしがみえるようであれば、今後の治療方針の変更にも役立つと思います。それよりもなによりも、気分転換できますから、心にも体にも好影響は間違いなしですよ!!
では、おだいじに!!

健康ページへ