司野 馨  ――陽――  ツカサノ カオル  ヨウ
 
 
     『いつからか、記憶が断片的に無くなった。
     おかしいとは・・・思っていたのだ』
 
          「管理官・・・! 御両親が――― 」
 
     明らかな不審。
     不覚にも、その現場を、美しいと思ってしまった。
 
     真白な雪の上の緋さ。
     真白な花弁の花。
     白銀製の・・・ロザリオ。この家のものではない。
     時が止まったその空間。
     そこにある・・・
     私の両親の死体。
 
     母の纏った真赤なショールから、母の白く美しかった手首が見えた。
     唯一、緋くなかったその手首のブレスレット。
 
     私はその空間に
     魅入られた。
 
     まるで写真のように私の中に切り取られ、それは残った。
     『気づくべきだったのだ・・・』
 
     真実に行き着こうと、躍起になり、出世と引き換えに、飛ばされた。
     追うことが出来なくなってしまった。
     中途半端だった。そんなとき、改革を考えるようになる私。ようやく・・・
 
     この頃やけに意識が途切れているような気がしてならない。
     どこからか、何かが私を嘲笑っている。そんな気がする。
     『気づくのが遅すぎた』
 
     新卒キャリアがこんなところまで研修に来た。東大閥のこの警察
     社会の中で、彼は生きて行けるだろうか。
     「警察社会は学歴社会だ。」
     「・・・わかっています。でも、僕はそんなことで入庁したことを、
     後悔しません。」
 
     そう言った彼の瞳には、強い何かが宿っていた。
     この子は将来・・・・おそらく、期待を持てる。
     私は直感し、彼に言った。
     「いつか君とは理想を語らいたいな」
 
     彼は虚を突かれたような表情をしていた。
     ・・・彼はおそらく、官僚らしからぬ官僚になるだろう・・・。
     その時だけは、暗い何かを忘れることができた。
     彼といた、時間だけは・・・・・・
 
     あぁ、彼の名前は何と言っただろうか・・・
 
     何故、思い出せないのだろうか。
     何故・・・
 
     全ては・・・この・・・
 
     この、別人のせいだ。
 
          今更気づいてももうおせえんだよ!
          お前の両親の死の真相を教えてやろうか?
          それはなあ―――
 
     私の中の誰か。
     私であり、私で無いモノ。
     私の代わりに私の・・・あの子を・・・。 手をかけ・・・。
 
     私に・・・殺される。
 
          俺がやったんだよ・・・!
          美しかったろう。・・・フフフ・・・
 
     殺され・・・――
 
 
 


 
 2番弟子こと、慧霧さんの投稿3作目。
 グロいです(笑)
 本人も曰く、「知らない人から見ればすごい内容ですよね」とのこと。
 強烈です。
 でも、初めて殺人現場なんかを見て、こう思う人って多分いるんでしょうねぇ……(^^;)
 そういう人はある意味、医者に向いているでしょう。
 僕なんかは、恐くて手術の立ち合いすらできません(^^;)
 


 
 
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